自己都合退職にも退職届の書き方で二つの方法がある

まず「一身上の都合により、〜を持って退職させていただきます」と書けば、労働契約の一方的解約意思の通告となり、「辞職」の意思表示の撤回は、 相手に到達した後は許されない。勿論相手が許せば問題ない。

方や、「一身上の都合により、〜をもって退職致したく、お願い申しあげます」となると、使用者の承諾を要件とする「合意解約の申し込み」となり、 「辞職」の意思表示の撤回は、使用者に不測の損害を与えるなど信義に反する特段の事情がない限り、使用者が承諾するまでは許される。但し、社長や 人事部長と言った、人事の決定権者が受理した場合は、その時点で合意解約が成立したものとされる。

合意解約の場合は、明日辞めようがいつ辞めようが合意した日が退職日となるが、一方的解約である場合は、原則は申し出後2週間で効力が発生するので、 2週間後に辞めることができます。但し、給料支払い期間が何日から何日までと決められている場合は、その支払期間の前半に退職の意思を申し出れば、 その締め日で退職できるが、支払期間の後半で申し込んだ場合は、次の締め日が退職日となります。

正当な理由がある自己都合退職

自己都合退職の他の分け方は、その退職が真に恣意的なものか、正当な理由があったのか、の違いである。自己都合により離職した場合は、通常7日間 の待機の後、更に3ヶ月間の給付制限が行われるが、正当な理由がある場合は、その3ヶ月間の給付制限は付かないし、給付日数も、解雇された場合と同じに なる。

正当な理由とは次に掲げるものとなる。

ア. 体力の不足、心身の障害等、視力・聴力・触覚の減退等で離職した者

イ. 妊娠・出産・育児等により離職し、基本手当の受給期間延長措置を受けた者

ウ. 家庭の事情が急変した(子の面倒を見て貰っていた父母の死亡等)ことにより離職した者

エ. 配偶者・親族と別居生活を続けることが困難となったことが原因で、離職しなければならなくなった者

オ. 結婚、育児に伴う保育所の利用、事業所の移転、鉄道・バスの廃止等の理由により、通勤不可能又は困難となったことで離職した者

カ. 人員整理等で希望退職者の募集に応じて、離職した者

これらの条件を見て、自分は「ア」の理由で辞めたんだと思ったとしても、正当な理由かどうかの判断は、公共職業安定所の所長の権限であるので、 実際上は、職安に初めて離職票を持って、休職の申し込みを行う手続きのときに、窓口の職員に自分はこう言う理由でやめたんだから、正当な理由に なるんじゃないかと、はっきりと強く主張することが重要で、この窓口での手続きの時にしかチャンスはない。

どうしても納得できない場合には、口頭で、不服申し立てをしますとか、審査請求しますとか言うしかないが、後で社労士とかと相談してから申し出る こともできます。しかし結局、給付制限以上の時間がかかり現実的ではありません。

この正当な理由のある自己都合退職については、職安が積極的に知らせると言ったことはないし、会社の人も知っているひとはいないので、知ってる者勝ちの 世界です。更に、離職票を貰うとき、事業主が丸印を付けた離職理由に、異議が有るか無いかの判断と記名・捺印を求められますが、その時点ではっきりと 異議有りに丸印を付けて記名・捺印する勇気を持つことが必要不可欠で、異議無しに丸印を付けておいて、職安の窓口で文句を言っても多分認められないかも 知れません。

特定受給資格者とは

自己都合で辞めた人や定年退職した人の場合は、一般受給資格者と言いますが、倒産・解雇等の理由で辞めた場合は、一般の人より受給期間が長く貰える ようになっています。この会社の倒産や解雇等で辞めて、基本手当を貰える資格のある人を特定受給資格者と言いますが、この解雇等の「等」の内容が曲者で、 詳しく知っている人はあまりいません。読むのが本当に嫌になりますが、特定受給資格者の範囲は次のとおりです。

(1)「事業の倒産、縮小、廃止等」により離職した者

  1. 倒産により離職した者(破産手続開始、再生手続開始、更正手続開始、特別清算開始の申立、手形取引の停止等)
  2. 事業所において、雇用対策法の規定による大量雇用変動の届出がされたため離職した者及び 当該事業主に雇用される被保険者の3分の1を超える者が離職したため、離職した者
  3. 事業所の廃止に伴い離職した者
  4. 事業所の移転により、通勤することが困難となったため離職した者

(2)「解雇等」次の理由により離職した者

  1. 解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由によるものを除く)
  2. 労働契約の締結に際し、明示された労働条件が事実と著しく相違したこと
  3. 賃金の額の3分の1を超える額が、支払期日までに支払われなかった月が引き続き2ヶ月以上となったこと
  4. 予期しえず、賃金が、労働者に支払われていた賃金に比べて、85%未満に低下したこと、又低下することとなったこと
  5. 離職の日の属する月前3ヶ月において、労基法36条の規定による、労働時間の延長の限度等に関する基準、に規定する時間(月45時間) を超える時間外労働が行われたこと
  6. 事業主が危険又は健康障害の生ずるおそれがある旨を、行政機関から指摘されたにもかかわらず、事業所においてそれらを防止するために必要な 措置を講じなかったこと
  7. 事業主が労働者の職種転換等に際して、当該労働者の職業生活の継続のために必要な配慮を行っていないこと、 即ち不当な配転命令がなされた場合など
  8. 期間の定めのある労働契約の締結に際し、当該労働契約が更新されることが確約として明示された場合において、当該労働契約が更新されないこととなったこと
  9. 期間の定めのある労働契約の更新により、3年以上引き続き雇用されるに至った場合において、当該労働契約が更新されないこととなったこと
  10. 事業主又は当該事業主に雇用される労働者(上司、同僚等)から、就業環境が著しく害されるような言動を受けたこと、セクハラやパワハラのことです
  11. 事業主から退職するよう勧奨を受けたこと(希望退職者の募集への応募に伴うものは、その措置の導入時期が離職前1年以内で  募集期間が3ヶ月以内であるものに限る)
  12. 事業所において、使用者の責めに帰すべき事由により行われた休業が引き続き3ヶ月以上となったこと
  13. 事業所の業務が法令に違反したこと
以上のことから、働きたいと思っているのに会社を辞めざるを得ない状況になった場合には、正当な理由のある自己都合退職か、会社側に原因がある 場合の、特定受給資格者に該当することが考えられるので、会社の総務課や職安ではなく、社労士に相談してみるのが良いと思います。

失業した場合の社会保険

(1)予備知識

この場合の社会保険とは、健康保険・厚生年金・国民健康保険・国民年金を指します。会社勤めの人は健康保険と厚生年金、失業した人は 国民健康保険と国民年金となります。

今度は、収入と所得の違いについてです。給与の場合の収入とは、実際に得た金額そのもので月収20万円、年収300万円とか言うのがこれに あたり、所得とは年収からサラリーマンとしての経費を差し引いたもので、給与所得控除がこのサラリーマンに認められた経費を表し、簡易給与所得表により 一律に決められています。年収161万9000円までの人の給与所得控除は65万円と決められていますので、たとえば年収103万円の人の所得は 38万円となります。

社会保険四つの制度が複雑でややこしいので、話を進める上で前提となる規定を三つ掲げておきます。

@健康保険の扶養家族になる為の要件としては、今年1月から12月までの1年間の収入見込みが130万円未満であり、かつ、一定程度扶養されていることが必要です。 父母・祖父母・配偶者・兄・姉に扶養されている場合は別居していても扶養家族になることができます。

健保の年収要件である130万円には、基本手当や遺族年金も含めて算定します。これは健保の扶養の可否に特有の規定であり、他では非課税所得である 基本手当や遺族年金を収入に入れることはありません。

A国保の保険料算定にあたっては、世帯員のうち国保加入者全員の前年所得を基準とし、基本手当や遺族年金は含めません。

保険料減免は、解雇や正当理由のある自己都合退職で、受給者証に減免する旨記された人に対してだけ行われ、しかも保険料算定基準の前年所得が30% 減額されるだけであり、減額は限定的です。

B国民年金の保険料免除の判定基準の前年所得には、本人・配偶者・世帯主の三人のものを合算して判定します。たとえ、配偶者や世帯主が厚生年金加入者 であっても、その所得も世帯の所得に合算します。基本手当や遺族年金などの非課税所得は含めません。

(2)健康保険について

基本手当(失業手当)受給中に、父母や配偶者等(ほぼ3親等内の親族)の健康保険の扶養家族になる為には、基本手当の日額が3,611円以下であることが 条件で、基本手当日額が3,612円以上である人は、基本手当受給後にしか扶養家族として健保に加入することはできないと言うことです。

基本手当日額が3,611円以下である人は、今年1月から12月までの1年間の収入見込みが130万円未満であることと、父母や配偶者等から一定程度の扶養を 受けていることで、健康保険の扶養家族として自己負担額が3割で診療を受けることができます。手続きは会社が年金事務所を通じて行い、保険料の増額はありません。 父母・祖父母・配偶者・兄・姉の健康保険の扶養家族であれば、一人暮らしで別居していてもかまいません。

基本手当日額が3,612円以上である人は、たとえ会社の健康保険加入者がいたとしても基本手当受給中は扶養家族になれませんので、基本手当受給後に扶養家族 になれる条件を満たしていれば、会社に申請することができます。

父母・配偶者等に会社の健康保険に加入している人がいない場合は、国民健康保険に入るしか方法はありません。この場合は離職日の翌日付で加入することになり しばらく手続を放っておいて、病気がひどくなってやむを得ず加入手続をした場合は、離職日の翌日から加入したものとして遡って保険料は徴収されることに なります。

国民健康保険の保険料減免については、解雇や正当理由のある自己都合退職者のみで、しかもほんのわずか減額されるだけで、国民年金の場合のような全額免除 はありません。国民健康保険料は、同じ世帯の中の国保加入者全員の、前年の所得により算出されますので、現在失業中であるかどうかはほとんど関係なく 徴収されます

(3)年金について

失業した人のほとんどは国民年金に加入することになりますが、配偶者が健康保険と厚生年金に加入していて、その配偶者の健康保険の扶養家族として認められた人だけは、 「被扶養配偶者」と言う名称のもとで、国民年金の第3号被保険者になることができ、配偶者が払っている厚生年金保険料の負担だけで、自身は何の負担をすることなく、 しかも配偶者の厚生年金保険料も増額されることもなく、国民年金を払っていることとされる特権を取得することができます。 配偶者以外の人が厚生年金に加入していても、何も影響してくることはありません。

国民年金は離職日の翌日付で加入することになります。国民年金の場合は、基本手当受給中の保険料は、一人暮らしの人の場合、保険料免除申請をすれば必ず 全額免除されます。この場合でも国庫負担がなされているので、半額は払ったことになって、将来の年金額に組み入れられます。又一人暮らしでなくても、 他の人に収入がなければ必ず全額免除されます。一人世帯でない場合、国民年金加入対象者全員が全額免除となり、全員が保険料を半額払ったとして、 将来それぞれの年金額に反映されることになります。

基本手当受給後の保険料については、前年の所得により、全額免除されるか一部免除か、免除を受けることができないかが決まります。一人暮らしでなく 他に世帯員がいる場合には、本人と配偶者と世帯主の三人の前年所得によって、全額免除か一部免除(4分の3免除・半額免除・4分の1免除)か、あるいは免除を 受けられないかが分かれます。世帯主や配偶者が国民年金ではなく厚生年金であっても、その人の所得も合算して判定されることになっています。反対に、国民年金 加入者が、配偶者や世帯主以外にいたとしてもその人の所得は含めません。

(4)結論

制度の恩恵に与ることができる第1番の人は、配偶者が健康保険と厚生年金に加入しており、その配偶者の健康保険の扶養家族となれる人であり、その場合 健康保険は保険料の増額無しで利用でき、国民年金は保険料の負担なしで、第3号被保険者になることができます。

第2番目の人は、親の健康保険の扶養家族になって、医療だけは国民健康保険に入らなくて済む人です。身の回りに健康保険と厚生年金に加入している人が いない場合は、一人暮らしをしている人が、免除申請は必要ですが、基本手当受給中に国民年金が全額免除されることぐらいで、他には何も良いことはありません。 一刻も早く、健康保険と厚生年金に加入できる働き方をしましょう!!

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