保険料が給料から天引きされるとき気を付けること

会社に入って給料から引かれる、健康保険料と年金保険料は、当月分の給料からは前月分の保険料が引かれることになっています。具体的に言うと、 会社の給料の締め日が毎月20日で30日払いだとして、今日は3月30日だとします。今日貰った給料は、2月21日から3月20日まで働いた給料で 3月分の給料だとすると、3月分の給料からは2月分の保険料が引かれていることになります。

保険料の計算期間は、給料の締め日とは関係なく暦の月単位です。これを入社月と退社月について考えてみます。3月1日に入社した人は、2月分の保険料は 発生していませんから、3月20日締めの3月30日払いの給料からは保険料は引かれません。

しかし、会社によっては、法律を知らずに引く会社も見受けられます。その時は一応、法律では引いてはいけない事になっていると抗議はしても、 今まで全社員に対して、その方法で引いている場合は修正することは困難なので、退社した時に気を付けることになります。

まずは法律どおりに保険料を引いている会社の場合

3月1日に入社した人の保険料は、3月分の保険料ですから、4月30日に貰える4月分 の給料で初めて引かれます。この人が3月20日まで働いて辞めたとします。当月入社当月退社の人からは、ひと月分の保険料を引く事になっていますので、 退社してないなら3月分の給料からは引かれなかった保険料が3月分で引かれます。

この人が7月20日で退社した場合は、7月30日の7月分の給料から6月分の保険料が引かれ、7月分の保険料は引かれません。その代わり、7月21日 付けで国民健康保険と国民年金に加入しなければならないので、7月分は国民健康保険料と国民年金保険料として払うことになります。

この人が7月31日の末日で退社した場合は、6月分の保険料は7月分の7月30日支払の給料から引かれ、7月分の保険料は8月30日支払の給料から 引かれることになります。

しかし、8月30日支払の給料は、労働日数が少ないことや欠勤などで保険料を引けなくなる可能性があります。そこで月末退職の場合に限り、7月分の給料 から2ヶ月分の保険料を引くことが認められています。

保険料の引き方を間違えている会社の場合

ここで入社した月の保険料を、その入社月分の給料から引いていた会社は、7月分の保険料を7月30日 支払の給料から引くと言うことになりますが、退社日が7月31日であれば、7月分の保険料が発生するので、7月30日の給料から引いたとしても勘定は 合いますが、7月20日で退社した人に対しては、7月分の健康保険料と厚生年金保険料は発生しないので、7月30日支払の7月分の給料からは引かれない ことになります。

こうであれば、ひと月分ずれるだけなので問題ないのですが、無知な会社は、入社してすぐの給料でも引き、月の途中で退社して退社月の保険料を引いては いけないのに、きっちり引いて来るところがあります。健保協会や年金機構は当然法律どおりしか会社へは請求してきませんので、結局会社がその社員から 余分に1ヶ月分を引いて、会社の懐に入れることになります。退社した人も引かれて当然と思っているので文句は言いません。だから入社した月と退社した月 の保険料は、何月分の保険料が引かれているのか気を付けなければなりません。

名古屋市など公務員の給料計算期間は、暦どおり1日から末日までになっており、給料支払日は月の半ば近くになっている為、半分は後払い半分は先払い になっています。残業代だけ前月分を貰うことにしている様です。この場合には典型的に、2月分の保険料は3月分の給料から引かれ、3月末日で退職した人は 、3月分の給料から、2月分と3月分の2ヶ月分の保険料が引かれる事になります。

「非常の場合」の給料支払い

尚、余談になりますが、通常の会社は、給料は全額当然のように後払いですが、本人や家族等が「非常の場合」の費用に充てる為に請求した場合は、 既に働いた分の給料を、給料支払日前に、繰り上げて支払わなければならない、と言う規定があります。これは給料の前借りではありませんので会社は拒む ことができません。「非常の場合」とは、本人かその収入で生計を維持している者が、出産したり、病気になったり、災害を受けたり、結婚したり、死亡したり、 又今回の地震で被災した場合のように、やむを得ない事由により1週間以上にわたって帰郷する場合です。経理や会社に嫌われること請け合いですが、一度挑戦 してみてはいかがでしょうか。

結局、保険料は入社月については、何日に入社してもその月分の保険料は発生し、退社月は末日に退社した場合だけ、その月分の保険料が発生しますが、当月入社 当月退社の場合だけは、一日だけの在籍であっても1ヶ月分引かれます。同じ月に入社退社を繰り返すと、厚生年金は最初の会社の1ヶ月分だけ引かれ、 健康保険は両方の会社で引かれることもあります。以上のことから、会社が法律どおり保険料を引いているかどうかを知っておくことが重要であり、給与明細は 取って置いた方が良いでしょう。尚、雇用保険料についてはその月の給料の額に応じて、その月の給料から引かれます。前月分ではありません。

年金の大雑把なしくみ

大きく分けると国民年金と厚生年金の2種類になります。公務員は厚生年金の代わりに共済年金になります。国民年金は20歳から60歳まで加入できます。 その間、未納の期間があって国民年金が満額貰えない場合は、任意で65歳まで加入することができます。更に、25年の年金加入期間を満たせない人は70歳まで加入できます。 厚生年金は、もし中学卒業後から加入したら、最高70歳まで加入できるので、55年間加入できることになります。

国民年金と厚生年金との関係は、国民年金が基礎年金として1階部分、厚生年金は2階部分となり、国民年金は自営業者や失業者、学生及びその家族が加入 することになり、会社勤めの人は厚生年金保険料を納めると国民年金にも加入したことになります。

厚生年金の保険料は、会社と労働者が折半して払うことになっており、会社が負担した保険料は、国民全般の為に使われるのではなく、その労働者の為にしか 使われない為、会社勤めの人か国民年金だけの人かで、将来の年金額に3倍以上の開きがでており、社会の不公平制度を絵に描いたようなしくみになっています。

更に、サラリーマンの妻については、保険料を納めなくても国民年金に加入したことになっている為、ますます不公平さを助長しています。

共済年金は公務員だけを対象にして厚生年金よりも更に手厚いものとなっており、これら国民年金・厚生年金・共済年金を一本化して公平な制度にするべきですが、 制度が複雑なことや利害関係もあって、誰もずーっと一本化することができない状態です。そもそも国民年金・厚生年金・共済年金は、それぞれ独立して発展して来て おり、昭和61年に国民年金を基礎年金として位置づけ、1階部分だけは、厚生年金・共済年金ともに統合した形となりましたが、いかんせん2階部分の全くない 人と、2階部分が1階の国民年金よりはるかに多い人がいる状態は、手つかずのままであり、更に企業年金と言った3階部分を持つ大企業が存在する様では、 社会の不公平を誰しも感ずるところです。

テレビでさかんに不公平だと問題になっている「運用3号」

国民年金加入者は、1号・2号・3号に分けられており、国民年金にだけしか加入できない自営業者や失業者、学生のばあいは1号被保険者、厚生年金や 共済年金など2階部分の加入者でもあり国民年金の加入者でもある人を2号被保険者、2号被保険者の配偶者で扶養家族として年収130万円未満の者が3号 被保険者と名付けられている。

この3号被保険者として夫の保険料だけで、国民年金保険料を払っているとされる妻が安泰としていられるのは、夫が会社に 勤めている間だけであり、夫が退職したら夫も妻も1号被保険者となるが、その手続が本人任せであった為、そんな手続が要るのを知らなかったか、知ってからも 手続をほかって置いたのか、そのまま3号被保険者としてずーっと記録されていた為、1号に切り替えて国民年金保険料を支払っていた人と、「運用3号」として、 保険料を払ったことにして貰った人とで、大きな不公平が今更ながら持ち上がった。3号被保険者の存在自体不公平を象徴する存在だったのに、それに拍車をかけたのだ。

年金のことを知りたいと思って勉強して社労士になった私であるが、年金のおおよそのことは解っても複雑怪奇なこの制度はややこしすぎる。年金制度を知らない 人が、国民年金法や厚生年金法だけを読んで、現在の年金制度を思い描くのは不可能に近い。

社会保険に加入しなくてもよい業種

健康保険と厚生年金は、常時従業員を使用していれば法人である限り必ず加入しなければならないが、個人経営である限り従業員が何人いても加入しなくても よい業種がある。勿論加入することもできるが義務ではない。その業種とは、農林水産業や、サービス業のうち飲食店・旅館・料理店・接客的なサービス業、 それに自由業である弁護士や社労士の事務所、宗教業である寺や神社である。だから飲食店などで働く場合は、法人であれば必ず社会保険の加入は強制であるけれど、 個人経営の場合だと社会保険に加入してなくても合法であることを知っておかなくてはいけません。

この様な事務所が任意で加入しようと思ったら、事業主が認可申請して認められれば加入できますが、その条件として従業員の2分の1以上が同意 しなければならないと言うことが必要になります。

厚生年金はできるなら20年以上は掛けた方がいいのですが、働く業種によっては掛けられない場合もあると言うことです。厚生年金のない働き方は、 技術一本で老後も生きていける人だけの話で、アルバイトであれ派遣であれ何しろ厚生年金のある会社で働くことがお勧めです。

保険料の会社負担を避けようと必死の企業たち

とは言っても事業主側は、健康保険と厚生年金に入らなくてもよい方法をいろいろ考え出している。これは民間だけではなく国や自治体も同じ体質と思われます。 と言うのは、健康保険や厚生年金には適用除外という規定があり、会社自体は加入している場合でも、加入させなくてもよい労働者の存在を許しているのです。

その一つに、2ヶ月以内の期間を定めて使用される者は適用除外とする、と決められているので、これを逆手に取って、アルバイトや期間従業員を採用する時に、 契約期間を2ヶ月にして堂々と健康保険と厚生年金の事業主負担を免れているのです。それに加え2ヶ月以内の期間を定めて雇用される者を解雇する場合は、 解雇予告をする必要がないと定められています。

更に、パートなどの短時間労働者の厚生年金保険の適用については、1日又は1週間の所定労働時間及び1ヶ月の所定労働日数が、通常の労働者のものと比べ おおむね4分の3以上であれば、適用すると言う運用になっている為、4分の3以上にならない様に労働時間や勤務日数を調整して、ここでも社会保険に加入 しなくてもいい様に、小細工を行っているのが現状であり、民間であれ国や地方自治体であってもこの傾向は変わらない。

又それ以上に、当然社会保険に加入しなければならない事業所でも、保険料の会社負担を嫌って、堂々と社会保険の加入手続を行っていない所が数多くあり、 そのことを労働基準監督署に訴えても、加入を促すパンフレットを送るだけで、本当に法律どおりに加入させようと強制することをしていない。それを見越して 平然と違反を行っている企業が数多くあることが現実です。

この様な法人企業は、法人であることのメリットだけは利用して、社会保険への加入と言う義務を果たしていません。その様な法人からは、法人の資格を剥奪 すべきだと思いますがいかがでしょうか。

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