産前産後休業

妊娠した場合の産前休業

女性労働者は、出産予定日以前の6週間について、休業を請求することができ、使用者はその間、 その女性労働者を使用してはなりません。請求がなければ、出産日の当日まで労働することも可能です。 双子以上の多胎妊娠においては、出産予定日以前の14週間について、休業を請求することができます。

出産が予定日より早まったり遅れたりした場合は、産前休業期間は、出産当日までが産前期間となり、 日数が少なくなったり、多くなったりします。

産後休業

実際の出産日の翌日から8週間が、産後休業期間であり、産後休業については請求は不要であり、 労働基準法上当然に、就業が禁止されています。 産後6週間は絶対的に使用禁止であるが、その後の2週間については、本人が働くことを請求し、 医師が支障がないと認めた業務に就かせることはできます。 産後休業期間は、多胎出産においても変わりありません。

尚、労働基準法により、産前産後の休業期間中及びその後30日間は、天災事変その他やむを得ない事由の為 、事業が継続できなくなった場合以外は、解雇することができず、たとえその期間中に使い込みの発覚等、 懲戒免職事由が判明しても解雇することはできません。 更に、男女雇用機会均等法により、妊娠中及び出産後一年を経過しない女性労働者に対する解雇は、 事業主が、妊娠または出産に関する事由を理由とする解雇ではないことを証明しないかぎり、無効となります。

平成26年4月1日から、産前産後休業期間中の健康保険料と厚生年金保険料が免除されることになりました。
(平成26年3月31日までは従来どおり、育児休業期間中だけの免除となります。)

産前産後休業期間中の金銭的補償(健康保険から)

出産育児一時金

妊娠4ヶ月(85日)以上の出産をした場合、生産であっても死産であっても流産であっても、一児につき 39万円が支給され、産科医療補償制度に加入する病院等で出産した場合は、一児につき3万円が加算されます。 (暫定措置であった39万円の金額が、平成23年4月1日から恒久化されました。) 流産の場合、経済的理由による人口流産については一時金は支給されません。

産科医療補償制度とは、在胎週数が33週以上・2000グラム以上で出生した子が、重度の脳性麻痺となったときに 補償金を支給する制度で、これに加入する病院等は一児につき3万円の掛金を負担しています。

出産育児一時金は産婦自身が、健康保険の被保険者である場合に支給されるものですが、夫の被扶養者となっている 場合には、夫の健康保険から同額が、家族出産育児一時金として、夫に支給されます。

出産手当金

これは産婦自身が健康保険の被保険者である場合に支給されるもので、標準報酬日額の3分の2が、 産前産後休業している間支給されます。 標準報酬日額とは標準報酬月額を30で割ったもので、ほぼ月給の30分の1です。 標準報酬月額が20万円の人なら、1日分の出産手当金は4,447円です。 これが、出産の日以前42日(6週間)から、出産の日後56日(8週間)までの間で、労務に服さなかった期間、 出産手当金が支給されます。 多胎妊娠の場合や、予定日より出産日が遅れた場合は、42日間より長く支給されます。

但し、会社を辞めるまで働き続けて、退社したあと出産した場合は、出産手当金はでません。 ぎりぎりまで働いて最低限、離職日に産前休業をとり出勤していない場合には、引き続き1年以上の健康保険加入者 であったことを条件として、退職後も産後56日まで出産手当金を受けることができます。 在職中の出産であれば、入社してすぐであっても支給されます。

結局、会社の為を思って働き続けると、自分にとっては為にならず、会社を辞めてしまっては、出産手当金のみならず、 1歳(例外あり)までの育児休業期間中、雇用保険から支給される育児休業給付金も支給されなくなるし、 育児休業期間中、健康保険料や厚生年金保険料が免除される特権も適用されなくなるので、出産する人は、 会社を辞めるという選択はしないほうがいい。

尚、保険料は免除されても、保険料の納付済期間となるので、厚生年金加入期間として加算される。 出産育児一時金については、引き続き1年以上の健康保険加入者であれば、離職して6ヶ月以内に出産すれば支給 されるが、夫の健康保険から家族出産育児一時金として貰ってもいいので、夫がいる場合はそう大した意味はない。

育児休業

育児休業とは、1歳に満たない子について、その子を養育する為にとる休業のことで、期間を定めて雇用されるもの については、雇用された期間が1年以上あり、子が1歳以降も、引き続き雇用される見込みであることが条件です。 休業開始前1ヶ月前までに、書面で事業主に申出をすれば、本人の希望する日から育児休業をとることができます。 子が1歳になるまでが原則ですが、予定していた保育園に入所できない場合等には、子が1歳6ヶ月になるまで延長して とることができます。

尚、女性については、産後休業が終了してからが育児休業期間であり、夫については妻の出産後が育児休業期間です。 夫については、妻の産後休業期間中に1回と、それ以降に1回と計2回とることができます。

更に、夫が妻に続いて育休をとった場合は、本来なら子が1歳になるまでしか認められていなかった育児休業期間が 、子が1歳2ヶ月になるまで延長されることになりました。 これを通称「パパ・ママ育休プラス」といいます。 ただし、夫なら夫ひとりで1年間が限度です。ひとりで1年2ヶ月とることはできません。 パパ・ママ育休プラスの場合にも1歳6ヶ月までの延長の特例をとることは可能です。

事業主は、育児休業をとれる労働者を、労使協定を結ぶことにより、限定することができます。 たとえば、雇用期間が1年未満のものや、育児休業の申出があった日から1年以内に、雇用関係が終了する予定のもの、 週所定労働日数が2日以下のものなどを、労働者の過半数を代表するものとの協定で、育児休業をとれないものと することができます。

尚、育児・介護休業法により保障された育児休業は、子が1歳になるまでであるが、育児休業の制度に準ずる措置による 育児休業は、努力義務ではあるが、子が3歳になるまでとることが認められている。更に、育児休業を終えたものとか、 育児休業をとらないものには、請求があれば残業をさせてはならないとか、短時間勤務制度を講じなければならないとかの 義務が課せられており、こうしたことから大企業や公務員では、3歳になるまで育児休業をとれるとしているところが多い。

子が1歳になる前に育児休業を終えて働きだした女性には、1日2回少なくとも各30分の育児時間を請求することができます。 但し有給かどうかは会社次第で、1日の労働時間が4時間以内の場合は、1日1回30分の育児時間を取らせるだけで合法となります。 又育児時間は休憩時間と違って、労働時間の途中ではなく始業終業時間に連続して取得することもできます。

なお、年齢の数え方については、年齢計算に関する法律が別に定められており、誕生日の前日に年齢を1歳加えることに決められています。 従って、子が1歳になるまで育児休業をとる場合は、子が1歳になったら駄目なので、誕生日の前日を除いた、前々日までが育児休業期間となります。 この為、日本の年度初めが4月1日からなので、小学校の入学をはじめ、誕生日が関係する事柄については、 4月2日生まれかどうかで境界を設けています。

育児休業期間中の金銭的補償(雇用保険から)

労働者が育児休業をしている期間中、原則子が1歳になるまで、雇用保険から、育児休業を開始してから180日目までは、休業開始前の賃金の67%、181日目からは50% の育児休業給付金が支給されます。(但し、平成26年4月1日以降に開始する育児休業から。それまでは全期間について50%支給。)
 妻は産後休業終了後の育児休業開始から終了まで、状況により、子が1歳になるまでか、1歳2ヶ月になるまでか、 1歳6ヶ月になるまで支給されます。妻も夫もそれぞれ支給されます。

例えば、妻が産後休業後引き続き育児休業を、子が1歳になるまでとり、妻の育児休業取得後、何ヶ月か遅れて夫が育児休業に参加した 場合は、夫には、子が1歳2ヶ月になるまで、育児休業給付金が支給されます。ただし、1年間が限度です。 更に、保育園の入所待機などがあれば、子が1歳6ヶ月になるまで支給可能となります。 この場合は1年間を超えても支給されます。

雇用保険から育児休業給付金を貰うための条件としては、育児休業を開始した日の前2年間に、 1ヶ月のうち11日以上働いたことのある月が12ヶ月以上有ることが必要です。

その他の権利

育児・介護休業法による、原則、子が1歳になるまで認められた育児休業期間中や、育児休業の制度に準ずる措置により 認められた、1歳以降の育児休業期間(現実的には3歳になるまでの期間)中の、健康保険と厚生年金の保険料が、事業主 の申出により、免除され、厚生年金については保険料納付済期間となるため、厚生年金を掛け続けたことになります。 平成26年4月1日からは、産前産後休業期間中も申出により、健康保険と厚生年金の保険料が免除されることになりました。

妊婦については、本人の申出にかかわらず、坑内労働は禁止。 産婦については、申出があれば禁止です。尚、産婦とは、出産後1年を経過していない女性のことです。

危険有害業務については、妊婦は、本人の申出にかかわらず全面的に禁止。 産婦の場合は一部の業務について就業禁止です。例えば、重量物の取扱い・鉛等の取扱い・著しい振動を与える機械器具 を使用する業務です。

小学校にあがる前の子を養育している労働者は、事業主に申出て、子の看護休暇を5日とることができ、子供が二人 以上いれば10日とることができます。 子の看護休暇の申出は、子の突発的な病気に対応する為に、当日に口頭ですることが可能です。 ひとりにつき5日でなくてもよく、片方の一人について10日とることもできます。 この場合も、事業主は、労使協定により、雇用された期間が6ヶ月に満たないものや、週の労働日数が2日以内のものを、 適用除外とすることができます。

育児休業中に又出産したらどうなる?

次々と出産して育児休業を取り続けることはできるが、出産手当金や育児休業給付金は貰い続けることができるのでしょうか?

育児休業中に、新たに妊娠がわかり子を産む為、新たな産前産後休業を取った場合、出産手当金は問題なく健康保険から支給されます。 何度出産を繰り返しても支給されます。問題なのは育児休業を新たに取った場合に、子が一才になるまで、雇用保険から 育児休業給付金が再び貰えるのかどうかと云うことです。育児休業期間中の健康保険料と厚生年金保険料の免除については、 何度育児休業を繰り返しても大丈夫です。

育児休業給付金には、支給要件として、育児休業を開始した日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上あった月が12ヶ月 なければならない、と云う規定があります。簡単に言うと月に11日以上働いた期間が12ヶ月は必要となります。この場合の育児休業を 開始した日というのは、産前産後休業も含みますので、新たに産前産後休業を取得した場合は、それより前2年間で12ヶ月間働いていた 期間がなければならなくなり、もし前の子に産前産後休業と育児休業で1年超使っていた場合は、働いていた期間12ヶ月をクリアできません。 そこで前の子で取得した、産前産後休業と育児休業期間は2年間にプラスすることができ、前の子で1年半既に休んでいた場合は、 新たに育児休業を開始した日前3年半の間に、賃金支払基礎日数が11日以上あった月が12ヶ月あればよいことになり、結局、 前の子の育児休業を開始した日前2年間に12ヶ月あればよいことになり、この場合はめでたく育児休業給付金を貰うことができます。 但し、2年間にプラスできるのは最長2年までです。と云う事は、前の子で産前産後休業と育児休業を3年間取り、ちょうど3年後に 次の子の産前産後休業を取得した場合は、新たな子についての育児休業(産前産後休業を含む)を開始した日前4年間(前の子で3年間育児休業 していても、2年間にプラスされるのは2年で計4年間までが限度)に必要であった賃金支払期間の12ヶ月がギリギリ満たされる可能性がある、 と言うことになります。

つまり育児休業給付金が次の子の育児休業期間中に支給される為の条件は、前の子の産前産後休業を取ったときから、3年経過する前に 次の子の産前産後休業を始めなければなりません。但し、これは途中で働くことなく育児休業を取り続けている場合に関してのみ当てはまります。

結局、育児休業を取り続けながら、次から次へと出産を繰り返しても、育児休業給付金については貰い続けることは不可能のようですが、 2回は貰えそうです。言いたかったのはこの結論です。


inserted by FC2 system